レコードプレーヤーの製作 
その2


ヤマハYP−1000UのMotor&Platterを金田式ターンテーブル制御アンプでドライブ
With 3012−R(SME) and AC−3300(AUDIOCRAFT)
 




(モーター編)


テクニクスのDDモーターが三種3個。何故かここにある。(^^;

上が初代SL−1200用のMJL−9A、左下がSP−10mkU用のMJX−12A、そして右下が初代SP−10用で型番不明(もともとなし?)。
いずれもテクニクスがダイレクトドライブターンテーブルを世に出した1970年代初頭のDDモーター最初期のもの。(ここにある個体の実際の製造年はもっと後と思われるが。)

そのうちでも最古で、元祖かつ世界最初のDDモーターであるSP−10用のDDモーターが遂にやってきたのだ。(^^) 

正しくはSP−10ではない。ヤマハのYP−1000Uだ。が、YP−1000Uのモーターは、すなわちSP−10mk2の発売と共に他メーカーに養子に出されたSP−10用のDDモーターであることは、モーター鑑定団の鑑定結果でも明らかになっている。

こうして見ると3種とも殆どそっくりだが、このうち元祖であるSP−10用のDDモーターだけが20極60スロットの構造であり、他は20極15スロットとやや簡略化されている。

他の4倍というスロットの多さやそのコイルの巻き方が醸し出すモーター内部の精緻感は下の内部写真のとおりSP−10用特有のものがある。

そんな元祖DDモーターを松下さんが何故に他メーカーへ養子に出してしまったのかは知る由もないが、そのお陰で1975年以降もこの元祖DDモーターを搭載したターンテーブルが市場に出回り、結果、21世紀の今日になって我が家にまでその元祖DDモーターがやってきたという因果であるから、この点では松下さんには感謝すべきかもしれない。

今回はこの元祖SP−10用DDモーター、世界最初のDDモーターだ。このような歴史的遺産を手にした以上、回してやるのが務めというものだろうて。(^^)

という訳で、ウサギ小屋の我が家では当然ながら発せられる家人の白い眼差しにも耐え、2台目のレコードプレーヤーを製作することにしたのだった。

果たして上手く回るか・・・(^^;







先ずは知ることが肝要。と、モーターを観察する。


モーターの後ろの化粧蓋を外すと中にオリジナルの制御基板が入っている。

これを見ると、制御基板もSP−10オリジナルのものと同じであることが分かる。

松下さん、モーター本体だけでなく、制御システム込みで元祖DDモーターSP−10を養子に出したのですなぁ・・・。
化粧蓋に張られた銘板。

YAMAHA JC00007 ですか(^^;
ここで作業をする。

オリジナルの基板に繋がっていたモーターからのケーブルを基板から外して、オリジナルの基板と化粧蓋は撤去してしまう。
代わりにAT−40基板を適当に切って内部からのケーブルの中継基板にする。

内側から出ているケーブルの
白=OSC、灰=OSC、緑=P1、青=P2、紫=P3、黄=PC
外側から出ているケーブルの
茶=A1、赤=A2、橙=A3の他、以下は使用しない
灰=Ccom、緑=1D、青=2D、紫=3D、黄=Dcom

を整理しておかないといけない。
で、後は適当なアルミアングル材などを介して基板をモーターフレームに固定してケーブルを中継すれば、取り敢えずの作業は終了。

モーター取付孔の深さは48mm。取り付けスペースにはあまり余裕はない。ので、ちょっとちまちまとした雰囲気となってしまった。
60スロットの分布巻きコア。

真ん中の基板もFL−PPP002であり、SP−10オリジナルと同じだ。(まぁSP−10そのものなのだから当たり前だが)

ローターの10個の歯を持つ歯車もオリジナルSP−10そのもの。

が、スピンドル軸系が6.95mmとオリジナルSP−10の11.96mmよりやや細いほか、軸受部分も回転軸の先端が局面加工となっている点はオリジナルSP−10と異なる。とは、モーター鑑定団の鑑定結果をそのまま引用。(^^;

が、これが養子に出されるに当たって変更されたのか、SP−10時代にすでにそのように変更になっていたのかは不明。
養子に貰った各メーカーさんも、外見までそっくりでは製品として出せなかったのか、差別化するにはここしかなかったのか、プラッターはそれぞれ個性を出していた訳だが、ヤマハYP1000Uのプラッターもなかなか良い仕事がしてある。

直径31cmのアルミ削り出しで、重量は2.8kg。
レコード滑り止め用のギザギザの付いたドーナツ状のゴムシートが付属している。

ゴムシートを載せる部分が1.5mmほど削られているプラッター表面。なかなかに精緻な面構え。

接触面積はその分減るもののAT−666も乗らないことはなく、乗せるとコツコツと締まった響きになる。ので、良い感じだ。
裏面も実に精緻な面構えだ。

K式で制御するには外周に描かれているストロボ用の縞の精度が問題な訳だが、目で見る限りではまぁまぁ良さ気だ。

入手したこの個体、ストロボの縞に問題になる傷もなさそうで、これなら最外周の216本の
縞が使えそうだ。(^^)

ここで軸中心からストロボの縞までの距離を掌握する。これをしておかないと次に進めない。

ので、計測してみると、軸中心から132mm〜149mmの間に4本のストロボパターンが入っている。





(ボード編)



さて、ターンテーブルのプラン。

モーターは勿論このSP−10用DDモーターとして、アームにはロングアームのSME3012−Rと、ショートアームのAUDIO CRAFT AC−3300のダブルアームで行こうではないか。

う〜ん。ダブルアームとは何 とも贅沢な気分・・・。(^^)

そう言えば今から30年位前にはそういうダブルアームのターンテーブルにちっとは憧れたなぁ。(^^;

それが今頃実現するとは思ってもみなかったわぃ。

って、まぁ、多くのメーカーから沢山のアームが選り取り見取りなどといった古き良き時代は遠い過去となってしまっている。から、要はたまたま縁あって入手した手持ちの生き残りたちを皆働かせてやろうということに過ぎないのだが。

で、早速ベースとなるプレーヤーボードの設計をする。

のだが、それはもうK先生の音楽を愛する新単行本下巻P223の図38をそのまま活用させて頂く。有り難うございます。m(__)m

図38には何故かモーター孔中心から速度検出部孔までの距離の記載が抜けている。ここはSP−10オリジナルのプラッター使用の場合は102mmであろう。と、思ったのだが、旧単行本を良く読めば、102mmはオリジナルプラッターの外から3番目のストロボパターンを使う場合の寸法だ。

この寸法指定が抜けたのは、ここは自分の使い方に合わせて各々設定すべし!という神意なのだろう。(^^;

で、YP−1000Uのプラッターの場合は上で計測した如く、孔中心からストロボパターンまでの距離が132mm〜149mmであるから、これが上手く速度検出部孔に収まるように、モーター孔中心から速度検出部孔までの距離は115mmとした。

SME3012−Rの取り付け孔については、図38のとおりだが、オーディオクラフトAC−3300の取り付け孔は、モーター孔中心から左130mm、上180mmの地点に深さ24mmまでは直径38mm、深さ24mmから板底までは直径70mmの円穴で開ける。

また、そのフォノコードを引き出すためのケーブル孔も開ける必要がある。

というわけで、設計図面は右二枚のとおりだ。

が、今ひとつ、よく見ればモーター取付孔中心のボード垂直中心線からのオフセット距離の記載が抜けている。これは30mm。こちらは単なる記載モレだろう。

で、早速製作ということになる訳だが、これは自作はハナから諦める。(^^;

昔から木工(というか工作全般)は得手ではないし、必要な工具の入手まで考えたらプロに頼んだ方がよほど安上がりだ。

ので、プロに作ってもらうことにした。

などということが出来るのも、はせがわさんがいわゆる桜集成材で製作可能な工房を探し出して下さったお陰だ。感謝。m(__)m

という訳で、ボードはそのうちの一つである広島の(株)山根樫材工場さんにカバ桜集成材で製作して貰うことにしたのだった。

これら2枚の図面を添付して、集成材の積層から孔開け加工、塗装も含めてお願いし(周囲面取加工もお忘れなきよう)、あとは約1ヶ月間待てば良いのであった。(^^)
  




で、1ヶ月待っていたらやってきた。(^^)

ずっしりと重く約20kg。

設計図どおりの出来上がりだ。

左が上から見た全景。

右はモーター孔。ケーブル取り出し孔も上手い具合だ。
左、速度検出部。ぴったりと設計図面どおり。

右、3012用アーム取付孔。NC加工時のものと思われるドリル孔が見える。
左が後ろから見た風景

右は裏から見た風景

K先生の製作指示では、厚さ24mm、600mm×500mmの板を4枚、接着剤と木ねじで張り合わせて作り、必要な孔は張り合わせ前に加工しておくものとなっているが、こちらは厚さ26〜27mm、600mm×96mmの板を19枚、接着剤で張り合わせて作られており、孔あけは張り合わせ後のNC加工だ。多分・・・(^^;




ボードが届いて荷開けしたばかりのところ。

流石にプロ。ボードの出来映えは素晴らしく、嬉しくなってしまって装着予定のモーターやアームをはやくも乗せてみてにんまりする。の図。(^^;









(制御アンプ編)


ここまで来れば一刻も早く制御アンプを作ってモーターを回してやらねば。だ。(^^)

こればかりはプロに作ってもらうという訳にはいかないので自作する以外にない。

ので、まずは制御部。その回路はこう。






制御部は、MJ2004年10月号のNo−179の回路をベースとする。が、No−179の回路図にはミスプリがあり、その回路図のとおりに作るとモーターが回らない。
ので、まずそれらを訂正しておく必要がある。


最初に、フォトインタラプタGP2S22のカソードとエミッタがアースに接続されているのだが、これだとGP2S22のコレクタ出力はマイナス電圧を出力出来ない。従って次段のボルテージコンパレータLM319Nの出力は−5Vに張り付いたままになってしまう。これでは制御部は全く機能しない。ので、ここは−5Vに接続して制御部が機能するようにしないといけない。

いや、発光ダイオード側のカソードについては十分な発光量が得られればアースに繋がっていても良い訳だ。が、配線材の節約にもなるのでとりあえず−5Vに繋いだもの。この辺は現物がないしGP2S22のスペックを見ても結局反射率次第の問題であるからどちらが正しいのかは不明。要は十分な光量が得られれば良いので、どちらに繋いだとしても抵抗430Ωを調整すれば良いだけ。

次に、フェーズコンパレータMC14046BのPCAin(14番ピン)とPCBin(3番ピン)への接続なのだが、何故かFGパルス側(回路図でMC14046Bの右上のモノステープルからの出力)がPCBin(3番ピン)へ、クロックパルス側(MC14046Bの左側にあるモノステープルからの出力)がPCAin(14番ピン)へと接続されている。これでは、位相制御は加速すべき時に減速信号を出し、減速すべき時に加速信号を出すことになるので、速度制御と位相制御がバッティングしてモーターはまともに回らなくなってしまう。ここは、接続を反対にし、FGパルス側を14番ピンへ、クロックパルス側を3番ピンへ接続して、モーターが正しく回るようにしないといけない。

最後に、水晶発振回路の4011BPの11番ピンと13番ピンへの接続なのだが、回路図のピン番号表記の通りに接続すると発振しなくなるので、11番ピンと13番ピンを交換して発振するようにしなければならない。

次は、今回あえてNo−179の回路から変更した部分。

@フォトインタラプタにはGP2S22に代えてコウデンシ(株)のSG2BCを使った。これはシャープのGP2S22がディスコンのため。スペックのとおり形状、ピン配置、機能ともGP2S22と互換性がある。これのカソードは−5Vに繋ぎ電流設定抵抗は430Ωとオリジナル回路図と同じ抵抗値にしてある。これはスペックから発光ダイオード側は動作電流値が20mAで最大光量となるためで430Ωでちょうど良いから。実際、この電流値を減らすほどにフォトインタラプタ出力パルスの上下対称性が崩れてマイナス側が伸び悩み、遂にはマイナス側に振れなくなって、制御部の機能が失われてしまう。

A位相制御部のサンプリング方式を、オリジナルのクロックパルス方式に換えてフェーズアウトパルス方式にしたこと。フェーズアウトパルス方式とはSP−10mk2用の我がNo−124制御回路で最近採用した方式で、その詳細について興味のある方にはこちらをご覧頂くとして、要すれば位相制御側のサンプリングパルス発生のタイミングをTC5081の4番ピンから出力されるPHASE OUTパルスで規定する方式だ。TC5081のPHASE OUTパルスと同様のパルスを出力する機能はMC14046Bにもあって、それは1番ピンから出力されている。MC14046Bの場合1番ピンは“LD”と表現されているので、その意味では“LDパルス方式”と呼ぶべきかも知れないが、今回入手し起用したCD4046BEではその1番ピンが“PHASE PULSES”と表現されており、ま、このまま“フェーズアウトパルス方式”、または短く“フェーズパルス方式”ということで良いかな。と。(^^; というわけでMC14528Bの12番ピンはCD4046BEの1番ピンに繋がっている。

BAに伴って、位相制御側のモノステープルマルチMC14528Bの挿入箇所を、フェーズコンパレータの前から後ろに移したこと。これは、挿入箇所の変更でクロックパルスの観測をせっかくし易くして頂いたところなのだが、フェーズパルス方式を採用する関係上こうせざるを得ない。

B−1 No−179もそうだが、音楽を愛する新単行本以降FG信号がモノステープルマルチMC14528Bを経由してからフェイズコンパレーターに送られる方式になっている。が、その方式は採用せず、FGパルスを直接フェイズコンパレーターに送るいにしえの方式にした。これはどちらでも良いはず。ただし、新方式ではFGパルスの立ち下がりがクロックパルスに位相ロックされることになるので、その立ち上がりがクロックパルスに位相ロックされる旧方式とは違ってくる。このためオシロで位相ロック状態を見た場合、旧方式とは異なり新方式ではクロックパルスにFGパルスの立ち下がりが同期する姿になるはずだ。

CFGパルスのTHの時間を設定し、回転速度を規定値に合わせるためのLMC555の6,7番ピンに繋がる時定数設定C&Rの組み合わせだが、そのRが12kΩ+5kΩ(45rpm)と15kΩ+5kΩ(33rpm)の組み合わせとなったこと。ここは現物合わせの結果だが、同じくSP−10のプラッター(こちらはオリジナル)をストロボパターンの最外周(216個)を利用して回しておられるはせがわさんの設定と奇しくも同じになった。

D速度制御側の積分回路を56kΩ+0.1uFの組み合わせとしたこと。
E位相制御側の積分回路を27kΩ+0.1uFの組み合わせとしたこと。

DとEはとりあえずの暫定定数のつもりだが、今のところこれで制御に問題はなく上手く回っている。


FGパルスはストロボパターンの最外周(216個)から作ることとして45rpmでは216*45/60=162Hz、33&1/3rpmでは216*33.3333/60=120Hzとなるので、プログラマブルデバイダーCD4059Aの分周プログラムはNo−179オリジナルと同じである。
よって分周比設定は、
33&1/3rpmで100000/120=8333.33≒8333
45rpmで1000000/162=6172.84≒6173

そこで

モード:8
Ka Kb Kc
ジャムインプット
  J1 J2 J3   J4   J5 J6 J7 J8   J9 J10 J11 J12   J13 J14 J15 J16   設定数 ×モード +余り =分周比
33


 
 



 



 



  1041 8333
45


  0
  1
0
0
0
  1


0
  1

1

  0771 6173
となる。なお、CD4059Aのモードとジャムインプットについてはこちらをどうぞ。


部品の基盤配置も基本的にオリジナルと同様である。裏側配線も、No−179の基盤配置図を参照して作る。が、この裏側の配線図はかなり間違いだらけなので、訂正した回路図を元に、各ICのピン配置を確かめながら、一つ一つ自分で確かめて配線を行わなければNo−179をものにすることはなかなかに困難。

そういえば、かつて掲示板にその間違い部分を書いたことがあったのを思い出したので、そちらからコピーしてみた。が、これらも正しいかどうかは保証の限りではない。この世はおのおの自灯明・・・(^^;

図5関係
○水晶発振のMC14011B近辺
@11番と13番が逆
A14番を+5Vへ の標記があるべき
B7番を−5Vへ の標記があるべき
C回路図で1.8MΩが基盤配置図では1.5MΩとなっており正解が不明(どちらでも良いのかも?)
○フェイズコンパレータのMC14046B近辺
@14番と3番が逆

図20関係
○上の基板表
@下に並んだVR2個とも 誤10kΩ 正2kΩ
Aその直近右上のVR   誤10kΩ 正2kΩ
BAの直近左側の抵抗   誤680kΩ 正820kΩ
CAの直近上側の抵抗2個 誤680kΩ 正390kΩ
DCの右上の抵抗     誤82kΩ  正39kΩ
○下の基板裏
@左から2本目の縦バーパターン
誤 +5Vジャンパー取り付け位置とパターンカット部分位置不適切
正 +5Vのジャンパーはカット部分の下側に取り付ける
A左から4本目の縦バーパターン
誤 +5V給電すべきところ+5Vジャンパーが取り付けられていない
正 左から6本目の縦バーパターンからわたり配線されている+5V給電ジャンパーをここにも取り付ける
B縦列となった横3穴パターンの左から3縦列目
横3穴パターン上から2番目と3番目のジャンパーの取り付け位置が逆
C縦列となった横3穴パターンの左から4縦列目
誤 横3穴パターン上から2番目にジャンパーが取り付けられている
正 横3穴パターン上から3番目にジャンパーを取り付ける
D縦列となった横3穴パターンの左から6縦列目(右から5縦列目)
誤 横3穴パターン上から10番目が−5Vにつながれていない
正 ジャンパーで直近右側の縦バーパターンにつなぐ


トリマーにはTM−7Pではなく、あえてネオポットを採用した。のは、トリマーの調整位置が一目で分かることを優先したから。

なお、写真で分かるとおりSEコンデンサーは今回日通工とニットクのディップマイカで代用してしまった。(^^:




次に、位置検出器とゲインコントロールアンプ。

No−179のものに同じ。基本的にいにしえから変わっていない回路だ。

が、2SC1775Aのエミッタ側のオフセット調整用のトリマー500Ωの下に820Ωを追加している。のは、実際動かしてみると500Ωでは位置検出コイル誘導波形の中心を、エミッタフォロア出力部分(5.6kΩの上部分)で0Vまで下げることができないから。


ここはいにしえには2kΩのトリマーで調整することになっていた部分であり、我がNo−124でも調整後1kΩ程度となっていることから、そもそも500Ωでは不足なのではないかと疑っていたのだが、案の定そうだったのだ。

もしかするとオリジナルのSL−110の場合も500Ωでは不足なのではないかなぁ・・・(^^;






ので、820Ωを基板裏側に取り付けてある。

のだが基板写真にはそれがない。

のは、調整前の段階で撮った写真だから。

なお、No−179の基板配置図はここでも間違っており、基板配置図を信じて配線すると+5V電源がショートしてしまうし、P1入力がI2へ、P2入力がI1へ出力されてしまうのでモーターは回らない。+5Vはショートしないように、またI1とI2は交換して配線しよう。要注意。











次に位置信号発振器と電源部。

これらは一つの基盤に収めた。

まず位置信号発振器だが、これもいにしえから基本的に変わっていない回路で、ウィーンブリッジ正弦波発振器にPPエミッタフォロアが付加されたものだ。


No−179のオリジナル回路図ではオペアンプ出力の1番ピンから帰還回路への結線を示す黒丸印・が抜けている。


モーターOSCコイルとの共振のための8200pFはSL−110のモーター用なので、ここはSP−10のモーター用に6800pFに変更した。ここだけ入手の都合で双信のディップマイカ。

なお、発振周波数を設定するコンデンサーの値が300pF(オリジナルは330pF)となっているのはこれも入手の都合によるもの。なので抵抗の方を5.6kΩ(オリジナルは5.1kΩ)としてほぼ同じ周波数で発振するようにした。

次に電源部だが、今回はスペースの都合もあってGOAディスクリートレギュレーターを搭載することはやめて、オリジナルのとおりレギュレーターICによる電源部を搭載することとした。

電源電圧監視装置は、現物はもちろん制御部に載っているのだが、その回路図はここに載せたもの。





次はモータードライブアンプ。






モータードライブアンプは、所要の素子類が手元に残っていないわけでもないので、パワーICではなく、ディスクリートGOAドライブアンプとした。(^^)

回路は、時空を超えた旧単行本掲載のモータードライブアンプの出力段に、音楽を愛する新単行本のモータードライブアンプのように多少の電圧ゲインを持たせたものとし、終段にはいにしえのNEC製三重拡散メサ型パワーTR、2SB541と2SD388をタイムカプセルから引き出してきて再びこの世で活躍してもらうこととした。

旧単行本の回路図では、終段パワーTRにNEC系を用いるときはそのドライバーである2SC960,2SA607のB−C間に220pFのSEコンを繋ぐよう指示されているのだが、今回作ってみたら、それはなくとも大丈夫のようなので付けていない。また、位相補正は旧単行本の回路図の倍の39pFを2段目差動アンプ右側にだけ取り付けた。

オフセットは初段3.9kΩに小抵抗をシリーズに繋ぐいにしえの方法で0Vに調整したが、終段のアイドリング電流はこの回路図のとおりで3台とも17mA程度となり、6.2kΩにシリーズの調整用小抵抗は不要だった。







   



さあ、基盤が出来ればケースに組み込むだけだ。

勿論こうして組み込む前に各基板の動作チェックと動作調整は可能な限り済ましておく。制御部と位置検出器&ゲインコントロールアンプ部はそれが不能なので目を皿のようにして配線などに間違いが無いかどうか確認しておく。特に電源系統はテスターで当たってショートしていないかどうか確認することを怠ってはならない。何事も段取り9分。なので、確認してみるとショートはしていない。


ここは今回もケース底面にアルミの桟を渡してこれに基盤を取り付ける構造を採用した。

これをやるともう基板をケース底板に直接取り付ける構造には戻れない。

当初アルミ桟の切断や穴あけに多少労力を余分に費やすが、その後の配線や後のメンテナンスに要する労力は雲泥の差となる。
と言うわけで、このように基盤をケースに取り付けた状態で、配線作業にしばし精を出すことにする。

右、ケース後ろ左側に4個のコネクターが見える。今回もモーターへの接続は我がNo−124と同様にDINコネクタ4個を使って行うこととしたもの。

向かって左から位置信号系、FG系、モータードライブ系、そして一番右がOSC系。
この間各部の調整も行いながら順次作業を進めていく。



左、基板裏に進が3個見える。
位置検出器&ゲインコントロールアンプ基板の裏側だ。位置検出器のトリマーが500Ωでは足りず、それにシリーズに追加した820Ωだ。
で、しばらく時間を費やして・・・

出来た。(^^)


とりあえず電池を電源とし、パイロットランプも点灯。




と、まぁ、こうして並べて見てみれば、あっという間に出来てしまったようだが、勿論そうではない。

それなりに心地よい疲労感を覚えつつ、しばし眺めて休息する。の図。(^^)









(調整編)



さあ、いよいよ調整だ。

果たしてモーターを回せるか否か。はやる気持ちを抑えて慎重に手順を進める。

その1 FG信号

先ずはフォトインタラプタの取り付けだ。ここでストロボパターンからFG信号を作り出すことが出来なければモーター制御は不可能なのだ。
だから、この部分は制御アンプの成否の鍵を握っている。


要点の一つは、フォトインタラプタを、ストロボパターンの直下に正確に配置することだ。

だから、スピンドル中心からストロボパターン中心までの距離は正確に把握する必要がある。ので、プラッター裏側のストロボパターンまでの距離を計測する。

今回利用するのは一番外側のパターンだ。
その長方形の長辺は3mmほどだが、スピンドル中心からその長方形の長辺の中心までの距離は147.5mm。

よって、フォトインタラプタはモーター孔中心から147.5mmの位置に配置すればOKということだ。
ありゃ。アルミ板に固定しないでAT−1で仮付けか?

いや、これで本付け。(^^;

ちょっと何か良いものはないかなぁ・・・とジャンク箱を探ったところ、AT−1の切れ端があったので使ってみたら、これが実に都合が良くて、ドリルで4mmの孔を開けるとSG2BCがきつめに上手くはまるし、そのリード線は裏側のランドに半田付けして上手く中継できるし、AT−1の幅と厚みもまるでここに収めよというぐらいぴったりなのだった。

これでモーター中心孔から鉛直上147.5mmの位置にぴったりとSG2BCを配置。(^^)

AT−1のボードへの固定は両面テープで“ぺたん”だ。すいません。(^^;
要点の二つは、フォトインタラプタとストロボパターンの距離だ。

SG2BCは勿論反射型のフォトインタラプタだが、本体と反射物との最適検出距離は0.8mmである。だから、プラッター裏のストロボ面から0.8mm程度の位置にSG2BCの頭の面を位置させなければならない。

そこでモーターをボードに乗せ、プラッターを取り付けてみると、ボード面とプラッター裏面には2mmの間隙がある。

ということは、SG2BCの頭面をボード表面から1.2mm程度突き出せば良いことになる。

これもAT−1のお陰で上手く行った。AT−1にはまったSG2BCのリードの付いた面を押してその面をAT−1のランド面と同一平面になるまで押すと、結果右のように頭が1mm程度飛び出して、これでちょうど良く最適検出距離が保たれる状態になるのであった。(^^)
で、右が出来上がりの位置検出部とプラッターの風景。

早速FG信号が上手く生成できるか試してみなければ。

で、早速FG系のコネクタのみを接続し、オシロの横軸(時間軸)を2mS/divに、縦軸(電圧軸)を2V/divに設定して、SG2BCのコレクタ出力をLM319Nの10番ピンのところで観測してみる。

と、ターンテーブルを手回ししてみると、上手く方形波が発生したよう。(^^)

で、下は先に進んで左が33&1/3rpmで回転時のもので、右が45rpmで回転中のオシロ写真。振幅は共に±4Vで上手くFG信号が発生している。
ストロボ縞の反射率のばらつきがある場合、輝線に滲みが出るわけだが、目で見る限り大丈夫そう。(^^) なので微分回路の挿入などの対策は取らず、回路図の通りでいく。

ここではマイナス側がストロボパターンで反射してフォトインタラプタのTRが導通して形成する波形だ。上のストロボパターンに良く対応している。制御に利用するのはこの信号の立ち上がりが0Vを切る瞬間の時間情報だ。

その周期は33&1/3rpmで8.3mS程度、45rpmでは6.2mS程度と読める。ので良いのではないでしょうか。(^^)
と、簡単に物事が運んだ訳ではなく、実のところは、SG2BCの最適位置決定までは上手くFG信号を発生させられないでやや難儀もし、SG2BCのダイオード側に流す電流値によってFG信号の形も大幅に変化することも実体験したのであった。(^^;

結果として、SG2BCにはその規格どおり発光ダイオード側に20mA、すなわちピーク発光が得られる電流を流すことによってこういうFG信号波形が得られたという訳。

で、このFG信号↑は方形波パルスとしては大変ブロードで、要するになまった波形だ。
これをボルテージコンパレータLM319Nが制御に適するパルスに整形してくれるわけだ。で、その結果がどうかをLM319Nの出力(7番ピン)で見てみたオシロ写真がこれ。↓

今度は横軸(時間軸)は2mS/divだが縦軸(電圧軸)は5V/divだ。で、左が33&1/3rpm、右が45rpm。

すっかり立ち上がり下がりの鋭いピーク±5Vの綺麗な方形波パルスになった。勿論周期は上と同じだが、波形が反転していることが分かる。LM319Nが反転動作だからだ。この波形の立ち下がりでLCM555をトリガーする訳だから、遡ればフォトインタラプタがストロボパターンの反射縞をその長方形の長辺側で検知し終わった瞬間毎にトリガーすることになる。

そして、その周期を管理制御し一定に保つのが制御アンプの役割・使命ということになる訳だ。






その2 OSC信号



次は位置信号発振器。
位置信号発振器基板に±15Vの電源を繋ぎ、出力にオシロを繋いで観測する。オシロの横軸は5uS/div、縦軸は5V/divだ。

で、1kΩのトリマーを徐々に右に回すと・・・おお! 1/3位回したところで発振が始まった。成功だ。(^^)

トリマーをさらに回して行くと1/2を過ぎる当たりまで同様の発振波形だが、それ以上回すと振幅が小さくなる。最大振幅は右のとおり大体±6V。

周期は12mS位だろうか。とすると発振周波数は83.33kHzということになる。

なお、オシロで見る限りでは、トリマーの位置は右に回して振幅が小さくなる直前でなければないということはないようだ。この例ではトリマーの位置が1/3から1/2の位置にあれば特に問題のない安定度と振幅の大きさで発振している。
その発振出力をモーターのOSC±に繋ぐ。コネクターを4種に分けているのでそのうちOSCラインだけを繋げばOKだ。(^^)

で、同じく位置信号発振器出力をオシロで観測する。軸設定は同じく
横軸は5uS/div、縦軸は5V/div。

なんと、振幅が±17.5〜18Vと3倍程度になっている。これが発振器出力のコンデンサーとモーターOSCコイルの共振によるものということになる。

有り難いことに、モーター回転状態でも共振後の正弦波の波形は綺麗で、ピークが多少上下する振動もあることはあるがそのレベルも微少で問題はなさそう。

よって、OKだ。(^^)

この正弦波信号がモーターステーター内部に120度の角度で取り付けられたOSCコイルに流れる訳だ。

右の写真に3組の小さなコイルが見えるがその組の内の緑の方だ。この緑のコイルは3個がシリーズに接続されている。

そうすると、近接して取り付けられた銅色のコイルに電磁誘導により同じ周波数の起電力が生じるということになる。

で、動作時にはローターの真ん中に取り付けられた10個の歯を持った磁性体の歯車がこれらのコイルの前面にあるために、その磁性体の歯車とコイルの位置によって電磁誘導作用に強弱が生じ、誘導側のコイルの起電力が大きくなったり小さくなったりと変化する。

そして、この各コイルに誘導される起電力の大きさが、すなわちローターの位置を示す信号になる訳だ。
そこで誘導側のコイルに誘起する高周波を検波し、ローパスフィルターで高周波を取り除くと、こうなる。

これは位置検出器の2SC1775Aのエミッタにおける波形なのだが・・・

う〜ん・・・出た〜! 噂の
ふたこぶらくだ波形(^^;

これは33&1/3rpmで回転中のもので、オシロの横軸50mS/div、横軸0.2V/div。でオシロはDCモードで見た波形だ。(ただしDC電圧はオフセットしているので、オシロ側で波形が中心に来るように調整しているのでDC電圧絶対値は正しく表示されていない。)

だから振幅は±0.6V程度。

プラス側が歯車の歯がコイル前面に位置した時で、マイナス側は歯車の欠けた部分がコイル前面に位置した時ということになる。

こちらは別のコイルによる波形だが、これも同じだ。

こうして見ると、とても正負で対称な波形ではない。tetsuさんおっしゃるように、デューティー比的見方をするとプラス側はマイナス側の1/2程度という感じだ。

これは、もともとのSP−10の制御手法においてこの信号の用途が何だったのかということに起因する訳で、はせがわさんおっしゃるように、やはりコイルの結合度が強くなるプラスのいずれかの時間=ローターの地点を検出するのがその用途で、その時点でパルス的にモーター制御信号を出していた、ということなのだろう。

が、我らが金田式では、この検出波形自体をモーターの駆動波形として利用する。となると、このデューティー比1対2の非対称波形で駆動して大丈夫なのだろうかしら・・・(^^;
取り敢えず、3つのコイルの検波後の位置検出信号波形を参考までに。
時間軸は同じく50mSだが、こちらは縦軸(振幅軸)を0.5V/divとしたもの。

縦軸スケールを変えただけでふたこぶらくだ波形であることが一層分かりやすいものとなった。







その3 モータードライブアンプのゲイン調整


まぁ、この波形をどうこうすることは無理なので、次の作業に進む。

モータードライブアンプのゲイン調整。

上の位置信号は、ゲインコントロールアンプで位相が反転してモータードライブアンプに入り、モータードライブアンプで電力増幅もされてモーター駆動信号になる。のだが、3個ある位置検出コイルの感度差やゲインコントロールアンプのゲインにばらつきがあるので、これらを最後のモータードライブアンプのゲインを調整することにより一致させ、3相のモータードライブ力を均衡させるための作業だ。

調整は、OSC系と位置信号系のコネクタを接続し、ゲインコントロールアンプのコントロール端子をアースに繋いで、プラッターを手で回転させながらモータードライブアンプの出力DC電圧をテスターで測り、そのピーク電圧がプラスマイナスで等しくなると共に、3台のドライブアンプの出力が同じ程度の電圧になるように調整する。

やってみると、位置検出器の2SC1775Aエミッタの500Ωを調整しても中心が0Vにならないではないか。

ので、それがそうなるように調整作業をしてみると、500Ωのトリマーとシリーズに820Ωを追加したところ今度は中心が0Vになるようになった。ので、その状態でモーターが1回転する間に10カ所生じるプラスマイナスのピーク値を測り、調整すると結果はこうなった。


      1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ±各平均 ±両平均   
P1-A1 + 13.10 13.20 13.05 12.00 13.10 13.30 13.25 13.30 13.20 13.50 13.10 12.71 Rg=1k
   - 12.80 10.60 11.50 11.00 12.00 13.50 13.90 12.90 12.50 12.55 12.33      
P2-A2 + 13.40 13.40 13.50 13.40 13.50 13.50 13.50 13.50 13.50 13.40 13.46 12.92 Rg=1k+150
   - 11.60 11.10 12.10 13.50 14.00 13.00 12.50 12.70 12.40 10.90 12.38      
P3-A3 + 13.10 13.00 13.30 12.90 13.60 13.50 13.30 13.40 13.55 13.50 13.32 12.66 Rg=1k
   - 12.10 12.30 11.90 10.50 11.30 10.75 11.80 13.20 13.55 12.60 12.00      

結論として今回はA2のゲインをやや小さくしただけだ。

上の位置検出出力で1つだけ出力がやや大きいのがあるが、それの分だ。

で、ここでは3台のピークが揃えばOKだろう。何故なら、プラスマイナスのピークはトリマーでいつでも上下に調整できるのだから。やはりここはトリマー式にしておくのが便利であり、正解と思える。

さて、ここまで来れば、この状態でモータードライブアンプ出力のコネクターも繋ぐとモーターは勢いよく回るはずだ。なので、繋いで回るか否か、早速試してみようではないか。

tetsuさん仰るように、このふたこぶらくだの位置検出波形からして、このようにプラスマイナスのピークを揃えた波形でモーターをドライブすべきかどうかについてはちょっと疑問があることも確かではある。が、ものごとやってみなければ分からないので、もうこれで回してみることにする。(^^;


ここが第一関門だ。

モータードライブ系のコネクターも繋いで・・・

電源オン!!

・・・・・・結果・・・・・・

んっ、回転し始めたぞ。徐々に、そしてついには勢いよく。わ〜い、第一関門突破!!\(^O^)/  

が、想定したような振動はないような・・・・・・(^^;

これで良いのか?

ちょっと様子を診断するため、この状態でテスターのDCモードでアンプ出力を図ってみる。と、針は多少ブルブルと震えつつも、その示す電圧の値はプラスにオフセットしている。波形からして当然なのだが、ドライブ電圧の平均値がそもそもプラスにオフセットしてしまっている訳だ。

やはり何となく気持ちが良くない。ので、位置検出器のトリマーを調整し、ドライブアンプの出力点を測るテスターの針が多少ブルブルと震えつつもその中心が大体0Vを指すようにしてみる。

心持ち、さっきよりモーターが気持ちよく回っているような気がしないでもない。(^^;

この状態では、ドライブアンプのドライブ波形のピークは大分マイナス側が大きい状態だ。

が、ドライブ波形がプラスマイナスで対称でない以上、その平均値を揃えてドライブすることが正しいように思えるので、先ずはこの状態で回すことにし、次の手順に進むことにしたのだった。







その4 速度制御と位相制御



次の手順とは、勿論速度制御と位相制御を掛けて、モーターを規定の定速回転状態に制御出来るか否かを確認すること。

なのだが、これは調整と言うよりまずは確認だ。オシロで動作確認を最初にやってしまうという手は勿論あるが、もうモーターを回すことによって確認しよう。こうなると一刻も早く回したいではないか。(^^;

と言うわけで、まずはアースに繋いでいたゲインコントロールアンプのコントロール端子を元に戻し、モーターと制御アンプを繋ぐFG系のコネクターも繋いで、要するにすべてのコネクターを繋いで、いよいよ電源オン。

の前に、速度制御VRの矢印が中央に、位相制御VRの方は左一杯(抵抗最小値)にあることを確認する。また、プラッター上にはストロボの円盤を乗せ、インバーターではない安物の蛍光灯で照らしておくことも忘れてはいけない。

で、意を決して電源オン。

結果・・・・・・プラッターが回り出した。さっきとは違ってゆっくりと・・・

ようし。成功だ。とりあえずは。

と言うのは、回転速度が規定速度まで上がらないのである。速度制御VRを右最大(=抵抗値最小)まで回しても定速まで達してくれない。33rpmも45rpmも同じだ。

が、これは想定の範囲内。これはLMC555の6,7番ピンに繋がる時定数設定C&Rの設定の問題に過ぎないはず。当初この抵抗については下手な計算に基づき暫定値として15kΩ+5kΩ(45rpm)と20kΩ+5kΩ(33rpm)の組み合わせにしていたのである。ここの合計抵抗値を大きくするほどに速度は遅くなり、小さくするほどに速度は速くなるのである。トリマーを最低に調整しても回転速度が定速に達しないということは、合計の抵抗値が大きすぎるのであるから、この組み合わせをもう少し小さくすれば定速に達するはずだ。

そこで現物あわせで調整した結果、そのRは12kΩ+5kΩ(45rpm)と15kΩ+5kΩ(33rpm)の組み合わせとなったのである。これで33&1/3rpmの方も45rpmの方もストロボが止まって定速で回転するようになった。

で、速度制御部はOK。(^^)

次は、位相制御部。

これも目で確認できないことはない。ので、33&1/3rpmで(45rpmでも勿論OK))プラッターを回転させながら、ストロボを眺めつつ、位相調整VRを左いっぱいからゆっくり右に回す。

と、8時付近でストロボの縞がすっと極微妙に動いてピタッと止まった。位相ロックが掛かった瞬間だ。おお! 位相制御もOK!!\(^O^)/\(^O^)/


と、まぁ、上手く行ったようなのだが、ここで確認のために制御部の動作をオシロで観てみる。



TC4011BPの11番ピン出力波形。

オシロの横軸は0.5uS/div、縦軸は5V/div。

だから、周期=1uSと読める。ということは周波数=1MHzのクロック波形。

多少なまっているようにも見えるが、この辺はオシロのブローブの設定のせいかもしれない。

まぁ、ここは1MHzの方形波が出ていれば問題ないところであり、写真のとおり全く問題なし。

FGチェックポイントにおけるFGパルス波形。

オシロの横軸は2mS/div、縦軸は5V/div。

上が33&1/3rpmで回転中のFGパルスであり、下が45rpmの場合のFGパルス。

33&1/3rpmで周期T≒8.3mSと読めるので周波数=120Hz、45rpmでは周期6.2mSで周波数=162Hzと読める。

上手く行っているのだ。

で、この周期はLM319Nの出力する方形波の立ち下がり周期が規定している訳で、といことは、遡ればフォトインタラプタがストロボパターンの反射縞をその長方形の長辺側で順に検知し終わる瞬間の周期が規定しているのである。

だから、33rpmの場合で言えばその周期が8.33・・・mS=周波数120Hzになるようにドライブアンプのゲインを調整する訳だ。周期が遅い場合はドライブアンプのゲインを上げ、早い場合はドライブアンプのゲインを下げて。



これを、このFGパルスがプラス5Vのハイレベルになっている時間THの設定で行うのが金田式モーター制御アンプの速度制御手法。

このTHは、LMC555の6,7番ピンに繋がるC&Rの時定数だけで決まり、電源電圧の影響を受けることがない。CとRに良いものを選べば温度の影響も極僅少にできる。

これにより、プラッター=モーターの回転速度が変動した場合、FGパルスの周期T自体は当然伸びたり縮んだりすることになるのだが、そのうちのハイレベルの時間THは一定で変動しないという動作になる。

だから、このFGパルスを積分回路で積分して三角波にすると、その山のピーク電圧が、プラッターの回転速度に比例して上がり下がりすることになる訳だ。

回転速度が落ちるとピーク電圧も下がり、回転速度が上がるとピーク電圧も上がるのだ。

右のとおり。

オシロは2現象とし、横軸は勿論2mS/div、縦軸は2V/divである。

これは45rpmの場合で、上から、回転速度が規定より速い場合、規定速度の場合、規定より遅い場合であり、三角波についてはLF398Nの3番ピンで観ているものだ。

速度が速くなると周期Tが短くなり、遅くなると長くなること。しかしながら、いずれの場合もハイレベルの時間THは同じであること。したがってローレベルの時間のみが伸び縮みすること。これによって、速度が早くなると三角波のピーク電圧値が上がり、速度が遅くなるとそのピーク電圧値が下がっていること。が良く分かる。

だから、この三角波のピーク電圧値をサンプル&ホールドして、LF356Nで反転してゲインコントロールアンプにコントロール信号として与えれば良いのだ。こうすると速度が速くなった場合にはモータードライブ系のゲインが下がってモーターの回転を遅くする方向に力が働き、逆に速度が遅くなった場合にはモーターの回転を早くする方向に力が働くことになる。

だから、一度これをLMC555の6,7番ピンに繋がるC&Rの時定数を33&1/3rpmや45rpmで回転するように設定しさえすれば、後はNFBの効果で多少の外乱を受けても自動的に33&1/3rpm又は45rpmの規定速度で回転するようになる。という訳だ。

これが即ち金田式制御アンプの速度制御の内容だが、オシロ写真から、その速度制御機能は全くにして上手く行っていることが分かる。(^^)
↓速度が定速より速い場合↓
↓定速状態↓
↓速度が定速より遅い場合↓
次は位相制御。

これは、水晶発振器で生成した精度の高い1MHzの方形波を、プログラマブル分周器CD4059Aで分周した精度の高い120Hz(33&1/3rpm)と162Hz(45rpm)の基準クロックパルスの立ち上がり時間とFGパルスの立ち上がり時間を4046で比較する。

4046は、FGパルスの立ち上がりが早い場合は、FGパルスの立ち上がりからクロックパルスの立ち上がりまでの間、+5Vのパルスを出力する。逆にFGパルスの立ち上がりが遅い場合は、クロックパルスの立ち上がりからFGパルスの立ち上がりまでの間−5Vのパルスを出力する。それ以外の期間は出力は0Vである。

速度制御の場合と同じように、この方形波出力を積分回路で積分して三角波にすると、その三角波のピーク電圧の絶対値はクロックパルスとFGパルスの立が上がり時間の乖離に比例して大きくなる。

但し、FGパルスが早い、要するに回転速度が速い場合は、方形波も三角波も、従ってそのピーク電圧値もプラスであり、クロックパルスの方が早くFGパルスが遅い場合は、逆にそれらは全てマイナスとなる。

だから、この三角波のピーク電圧値をサンプル&ホールドして、LF356Nで反転してゲインコントロールアンプにコントロール信号として与えれば、強力なNFBの効果で自動的にFGパルスの周期がクロックパルスの周期に同期させられ、結果、多少の外乱などにはびくともせずモーターは33&1/3rpm又は45rpmの規定速度で回転するようになる訳だ。

右4枚が、位相制御部のサンプリングパルスと位相制御信号が積分回路で三角波になった姿をLF398Nの3番ピンで観察したオシロ写真。

オシロの横軸は2mS/div、縦軸は5V/div。勿論2現象で、2現象の上がサンプリングパルスで下が三角波。

上から、1枚目が33&1/3rpmの場合において位相が2mS進んだ進み位相状態の場合で、2枚目が逆に位相が2mS遅れた遅れ位相状態の場合。3枚目が45rpmの場合において位相が2mSの進み位相の場合で、4枚目が2mSの遅れ位相の場合のもの。

回転に位相差がない場合はこの三角波部分は単なる直線になっているのだが、回転中の外乱により位相差が生じるとこのように進み位相(回転が規定より速くなった場合)の場合はプラスの、遅れ位相(回転が規定より遅くなった場合)の場合はマイナスの三角波が形成される。

だから、速度制御の場合と同じように、この三角波のピーク電圧値をサンプル&ホールドして、LF356Nで反転してゲインコントロールアンプにコントロール信号として与えれば良いのだ。

こうすると速度が速くなった場合にはモータードライブ系のゲインが下がってモーターの回転を遅くする方向に力が働き、逆に速度が遅くなった場合にはモーターの回転を早くする方向に力が働くことになる訳だ。

これが即ち金田式制御アンプの位相制御の内容だが、オシロ写真から、その位相制御機能は全くにして上手く行っていることが分かる。(^^)

なお、写真で分かるとおり遅れ位相の場合もサンプリングパルスが三角波の山を捉えている。のは、フェーズアウトパルス方式であるため。FGパルスの位相が進んでいる場合は、プラス三角波のプラスのピークにサンプリングパルスが同期しており、FGパルスの位相が遅れている場合は、マイナス三角波のマイナスのピークにサンプリングパルスが同期していることが写真から明らか。(^^)この点、オリジナルのクロックパルス方式の場合は、マイナス側のサンプリングが三角波の谷においてなされるのだ。
というわけで、制御部は速度制御も位相制御も上手く動作していることが分かった。(^^)

が、このように上手く動作していれば、速度調整を行った後に、2現象オシロの時間軸(横軸)を2mS/div、電圧軸(縦軸)を5V/divに設定し、チャンネル1にクロックパルス、チャンネル2にFGパルスを入れ、トリガーソースをチャンネル1(クロックパルス側)、縦軸モードをチョッパーモードにしてクロックパルスとFGパルスを観測すると、位相制御VRをゆっくり右に回したある地点でFGパルスがすっと吸い込まれるようにクロックパルスに同期して全く流れなくなる。

という右のような状態に当然なる。

右の写真は上33&1/3rpmの場合で下45rpmの場合。

すなわち、これが上手くそうなるのであれば、制御部は成功しているのである。

ので、あえて上のような部分までオシロで確認する必要はないという理屈ではあるわけ。(^^;






その5 モータードライブ波形とそのオフセット





さて、位置信号波形をモータードライブ波形として使用する構成である以上、K式ターンテーブル制御システムにおいては、SP−10の場合は正弦波からはかなり遠いこのふたこぶらくだ波形をそのままモータードライブ波形とする以外にはない。これはローターの歯車の形状に規定されるものであるから、これをいじる力量がない以上受け入れる以外にない宿命。

結果、この波形はプラスマイナスがかなり非対称であることから、プラスマイナスのピーク絶対値を揃えてドライブするとドライブ平均電圧がプラス側にオフセットしてしまう。

ので、ドライブ電圧の平均値を0Vとするのが、この場合正しい方法ではないだろうか?

が、これは、ドライブアンプ出力をステーターコイルの中点でアース落とさない3相スター結線であるから、結論としては対アース電圧でオフセットが生じていても問題はないようだ。

写真は左側3枚がドライブアンプ出力の対アース電圧平均値を0Vに調整したものであり、右側3枚はドライブアンプ出力正負ピーク値絶対値を対アースで揃えた場合である。

横軸は全て50mS/div。縦軸は一番上だけが2V/divで他は1V/div。

ともに33&1/3rpmで回転中のものだが、左側は波形の振幅中心が0Vにはなっておらず、プラスのピークは2V程度なのに対してマイナスのピークは−3Vを超えていることが分かる。

で、上から2枚が位相制御が掛かっていない状態でのものであり、最後の3枚目が位相制御を掛けた場合なのだが、こうしてみると、左右両者の波形や、速度制御、位相制御の量に有意の違いは見あたらない。

ということは、どちらも制御前の動作バランスに優劣はないということになる。

ので、やはりこの場合は、3相のモータードライブアンプの各振幅と3相間のドライブ電圧レベルを揃えることがことが肝要であって、その対アースDCレベルのオフセットは余り気にする必要はないということだろう。

結局、K先生の指示どおり、3台のモータードライブアンプ出力のプラスマイナスのピークを揃え、3台間においてもその値が極力揃うようにすることが、オシロを有しない者でも確実に最良の状態に調整する手法だ。ということになる訳だ。
          
が、それはそういうことというだけのこと。

今度は同じ写真を左に置いて、右の写真と比べてみる。

で、右の写真は何なのか?

と言うと、実は、右は同じ条件、状態で比較のために撮影したSP−10mk2のドライブアンプの出力波形なのである。

何と、遙かに正弦波に近いではないか。

えぇぇぇぇぇ・・・

しかも、こうして比較すると、SP−10の方は速度制御の変動量が多いことが明白で、制御を示す階段状の波形がより明確だ。

2枚目は縦軸のスケールを倍にしたもので、より違いが明確になる。

う〜ん。ちょっと悩ましくなってきた(^^;

で、これに、位相制御が掛かった状態が左右の3枚目の写真である。

当然だがSP−10の方に多くの位相制御を掛けている訳ではない。共に最低限の位相制御の状態だ。

一目瞭然。mk2の方が遙かに少ない実位相制御状態にあることが分かる。

なんと、これでは、ハナからSP−10の優位性に疑問符が付いてしまうような・・・(^^;

実際にもmk2の方は制御に伴うカカカッといった音を殆ど発しないのに、SP−10の方は常に微少ながらカカカッと音を発しているんだよなぁ。

位置検出のためのSP−10の歯車の形とSP−10mk2の銅帯に開けられたスリットの形の違いがこの結果をもたらすわけだが・・・、

ほんとにこれでいいのだろうか・・・(^^;

果たしてSP−10。mk2に勝る音を出すことが出来るのか!?





(試聴編)



という懸念はあるものの、それは音を出して聴いてみないことには分からない。



ので、最後の作業を急ぐ。

まず、SME3012−Rのオリジナルのフォノ信号送り出し機構は使えないので、写真の如く加工する。

オリジナルの取り付け支柱を活用して、適当に切ったAT−40を取り付け、これを信号ケーブルの中継基板とする。内部からの細いケーブルは大栄電線経由で基板に取り付け、外部へはこの基板で強度を確保しつつ引き出す。

そして、ボードに取り付ける。

精緻さの中にもおおらかに割り切るバランス感が流石なのがSME3012−R
こちらはオーディオクラフトAC−3300。

日本製らしく、実にまじめに作られている。

見ているだけでも楽しくなるメカニズムの妙。

設計者の智恵と愛情が詰まった力作だ。

日本にはこのオーディオクラフトのほか、SAEC、FRなど優れたトーンアームメーカーがあったのだが、それはあっという間に遠い過去になってしまった。

無常は法だから人智ではどうにもならない。

もはや、大事に使う以外、出来ることはない。
ついにSP−10モーターを回して音だし。の図。(^^)



わぅお〜〜ん。(涙)

何も言うことありませ〜〜ん。


ただ、もう聴きまくり。








(2006年5月21日)







(その後の1:再び積分回路の謎を考える)



積分回路の謎は深い。(^^;


今年の正月、我がSP−10MKU用No−124(改)制御アンプにおいて、位相制御のサンプリング方式の観点等からその謎を考え、新たにフェーズアウトパルス方式を導入して位相制御を完全対称にするとともに、その成果として積分回路の時定数を小さく設定することによって制御スピードの高速化を図るなどし、多少その謎の解明を試みた。

が、それは長年に渡るターンテーブル制御アンプの記事における積分回路の定数設定の微妙な齟齬が毎度繰り返されるるミスプリなのか否かを推測し得るものではあっても、そもそも何故そのような定数に設定されなければならないのか、という事の全貌までを推測できるものではなかった。

要するに、積分時定数は基本的に速度制御部も位相制御部も「MKU用制御部ではMKVの2倍、MKTの4倍に選んである。」(No−108:この場合の倍率は出力DCレベル対入力パルスの周期の比のことなので、時定数で言い換えれば、“MKU用制御部ではMKVの1/2倍、MKTの1/4倍に選んである。”という意味になる)のは何故なのか?が本質的問題なのだ。が、これが解明できていない。


が、今回ようやくその理由、すなわち積分定数の“ことの本質”を理解したのだった。(^^)

本当かいな・・・(^^;;





で、その結果制御部はこうなった。

何が変わったのか?と言えば速度側、位相側の積分回路の抵抗値が大きくなっただけ。

な〜んだ。予想通りじゃないか。すいません。(^^;










問題は、どうしてSP−10では積分定数をそのように設定するのか?その理由は何か?であるわけだが、それはFGなのである。
では分からないか。(^^;

SP−10には内蔵のFGすなわち周波数発電機がない。それ故、プラッター裏面等のストロボ用の縞を使って光学的に速度信号を作りこれをFG信号として速度制御、位相制御を行うわけだが、2004年10月号のNo−179で先生がおっしゃっておられるように、これらストロボ用縞の精度には限界があり、これを元に作ったFG信号の精度にも当然限界が出てきてしまうのだ。

今回の我がNo−179(改)SP−10についても、最初そのFGパルスをオシロで観測した時に、我がNo−124(改)SP−10mk2に比べてFGパルスの時間軸での揺れが大きいように感じたのだが、それは感じではなくて、事実としてそうだったのだ。

すなわち、プラッターのストロボを使用してFGを作り出す方式では、ストロボの精度が低いことを原因として、これを元に作るFG波形、そしてFGパルスが時間軸で揺れる(振動する)のである。

No−179で先生は、「面白いことにFG波形の揺れはSP−10でもSP−10MK2でもSL−1200MK3Dでも起こる。」と、機種を問わない普遍的な現象としておっしゃっておられるのだが、定性的にはそうとしても問題はその量的な程度であって、我がSP−10とSP−10MK2で比較した限りではSP−10MK2内蔵のFGの精度は今回のYP−1000Uプラッターのストロボ方式に比べればかなり高い。というのが、オシロで見比べての実感だ。

で、先生は続けて「これらはFGの精度の限界で生じるものなので、ターンテーブルが振動なしにきれいに回っていても、FGの検出のばらつきで波形が振動するものだ。これを無理に静止するように制御すると、ターンテーブルを振動するように制御することになる。制御量には最適値があり、制御し過ぎはけっして良くないのはこのような理由にもよる。」とおっしゃっておられるのだが、実はそこに積分定数設定の謎を解く鍵があったのである。

いやはや、今まで知らなかった自分は恥じ入るだけなのだが(^^;;、要するにこのFGの検出のばらつきによって間違った制御をし、かえって回転むらをモーターに注入しないように、FGパルスによる速度信号情報を平均化するという役割を積分回路が担っていたということなのだ。

ということに、時空を超えた旧単行本上巻164ページの「速度検出の誤差」を改めて読んでようやくハタと気づいたのであった。(^^;;

要するに、簡単に言ってしまえば、SP−10のストロボFG方式は比較的に精度が悪いので積分回路の定数をSP−10MK2やMK3の場合より大きくしなければならないのであって、逆に言えば、SP−10MK2の内蔵FGは比較的に精度が高いため積分回路の定数を小さくできるということなのだ。

シミュレーションで観てみる。

これが位相制御回路の積分回路だが、今45rpmで回転中のターンテーブルの216個のストロボにより162Hz=周期6.175mSのFGパルスが送られてきている際に外乱によりターンテーブルの回転が遅れパルスに2mSの遅れが生じたとした場合の三角波はどうなるかを観ようとするもの。
(厳密にはこれでは違いますが、まぁいいでしょ。(^^;)

R1を27kΩ、56kΩ、100kΩ、240kΩと変化させた結果を一挙にパラメトリックでPSpice(評価版)で観る。


で、結果は下のようになる。のは予想通りだが(^^;、緑が27kΩ、赤が56kΩ、青が100kΩ、黄色が240kΩの場合。時定数が小さい程に振幅も大きくなり、三角波のピーク値も高くなることが分かるが、三角波の谷は逆に小さくなる。ことについては前回注視した部分だが、今回注視すべきは三角波の立ち上がりの早さ、過渡特性だ。

すなわち、このグラフから明らかなように時定数が小さいほどに三角波の立ち上がりは早く鋭い。逆に時定数が大きいほどに三角波の立ち上がりは遅く鈍い。

だから、FGパルスに細かく時間的な揺らぎがある場合、積分回路の時定数が小さいほどに揺らぎに敏感に反応して三角波が大きく上下してしまうのに対して、時定数が大きくなるほどに揺らぎに鈍感になって三角波の上下は小さくなる。

揺らぎは一定方向ではないので、この状態を言い換えれば、時定数を大きくすると揺らぎを適度に平均化することが出来る、ということなのである。

それでは、実際に外乱により速度が定速から外れた場合の制御に遅れが生じてしまうのではないか、あるいは、制御すべき時に外乱を見逃してしまうのではないか、との危惧も生じるわけで、それにも一理はある。のだが、外乱はその外乱毎に基本的には一方向への変化であるのに対して、揺らぎは一定方向ではないというところが味噌だ。すなわち、FGのゆらぎは振動だから三角波は1波毎にプラス三角波とマイナス三角波を繰り返すのに対して、外乱は遅れ又は進み方向への一方向の変化だから三角波は同方向に複数波継続する。そして、三角波は時定数が小さいと殆ど1波で定常状態にまで立ち上がるのに対して、時定数が大きくなるほどに定常状態に達するまでに要する波数が多くなる。下のシミュレーションのとおりだ。だから位相制御量調整トリマーで実効制御電圧を調整し数波目以降が実効電圧値となるようにこれを設定すれば、ゆらぎによる制御電圧を排除して外乱に対する制御分のみ取り出すことが出来るのである。要するにこの考え方はコンパレーターにおけるヒステリシスレベルの設定に同じなのだ。

だから、このヒステリシスレベル、すなわち積分時定数の設定を、揺らぎの程度に合わせて決めようということになるのである。
「MKU用制御部ではMKVの2倍、MKTの4倍に選んである。」(No−108)のは、基本的にその結果である訳だ。(^^)








ということになると、積分定数の決定についてはこちらが最優先要素であるから、先ずこの点、要するにFGのゆらぎへの対処を第一に考えなければならない。

ので、我がSP−10についても積分定数の見直しをしたのである。


といっても別に偉そうなものではなく、カットアンドトライで決めただけ。(^^;

で、結果がこのオシロ写真。皆、縦に3枚セットで上から位置検出波形(上下反転したもの、縦軸200mV/div、横軸50mS/div)、速度制御のみの場合のモータードライブ波形(縦軸1V/div、横軸50mS/div)、速度制御+位相制御(最低)の場合のモータードライブ波形(縦軸1V/div、横軸50mS/div)。



SP−10  SP−10mk2  SP−10 
積分定数 速度56kΩ+0.1uF 位相27kΩ+0.1uF 積分定数 速度56kΩ+0.1uF 位相27kΩ+0.1uF 積分定数 速度100kΩ+0.1uF 位相100kΩ+0.1uF




左は、完成したばかりの時のものだが、位相制御を掛けると波形が激しく乱れ、大きく外に飛び出している部分もある。これは完全にFG波形の揺らぎによるものであり、正しくモーターを回転制御するものではなく、かえってモーターを振動させてしまう制御だ。

右が今回積分定数を見直したことによるもの。かなり落ち着いた波形にはなっている。が、これで最適な状態になっているか否かはまだ議論の余地がありそうだ。

真ん中は我がNo−124(改)制御のSP−10MK2である。こちらの積分時定数は速度側1/2、位相側1/4だ。にもかかわらずこれだけ安定した波形になっている。MK2の内蔵FGの精度の高さがこの結果をもたらしている訳だ。




いずれストロボ方式FGの場合、個体差もあり、自分のプラッターのストロボに合わせて積分時定数の設定を考えることが必要になる。というのが結論。





(2006年6月4日)







(その後の2:結局積分時定数設定は・・・(^^;)



という訳で、自分のプラッターのストロボに合わせて積分時定数の設定を考えて、積分回路はこうなってしまった。 燦然と輝く2個のV2A0.22uF。 って、別にV2Aである必要はないのだが。(^^;









まぁ、虎の子V2A0.22uFを登板させて、積分回路定数は速度側、位相側とも100kΩ+0.22uFだ。

で、位相制御側のトリマーの位置は写真のとおり9時のポイントにした。

で、最終的な回路はこう。↓

まぁ、いつか気が変わることがあるまではこの回路定数でよかろうて、と。(^^)









たまたまSP−10MK2とSP−10の双方を比較できて良かった。これでSP−10とSP−10MK2の積分回路定数が異なる理由も何となく理解することが出来た。

結論として、SP−10の積分定数とSP−10MK2の積分定数はそれぞれモーターの特性や環境に合わせてチューニングすべきなのだ。

先ずはFGの精度問題。

残念ながら内蔵FGを持たないSP−10では、プラッターのストロボ縞を利用してFG信号を作り出す必要があるのだが、そのストロボ縞の精度がSP−10MK2等の内蔵FGの精度にかなり及ばない。K先生は音楽を愛する新単行本においてSL−1200MK3Dについて「本モーターは
FG出力の周期むらが少なく、ターンテーブルの慣性モーメントが小さいので、速度制御も位相制御も気持ちが良いほどスムーズにかかる。」とおっしゃっている。SL−1200MK3Dのモーターの内蔵FGの精度も、SP−10やSL−1100のストロボ方式FGに比較してかなり高いのだろう。

であるから、積分回路がFGパルスの適度な平均化という役割を担わなければならない。ので、積分定数はFG信号の精度に合わせて設定する必要があり、SP−10など精度があまり良くないストロボ方式FGを使わざるを得ない場合は積分時定数を大きくする必要があるのだ。

次にモーター自体のトルク。

モーターのトルクが大きいほどにモーターは制御信号に素早く反応する。トルクが小さいほどに反応は鈍い。逆に外乱には弱くなる。さらに、この場合鋭すぎる制御は空振りになってモーターが悲鳴を上げてしまう。で、これまた残念なことに、SP−10のモータートルクはSP−10MK2より小さい。

これはローター磁石そもそもの磁力とステーターコイル巻き線構造の問題なのだが、この点では外見から受ける印象とは反対にMK2のモーターの方がMK1のモーターより高性能なのだ。だから、制御の観点からすると、MK1の制御はMK2の制御よりスピードを遅くした方が吉ということになる。

幸いこの二つの要素は矛盾しない。同方向だ。よって、SP−10については多少制御の速度を抑制し、FGパルスの速度検出誤差を適度にいなしながら、60スロットによるそもそもの回転のスムーズさを生かす方向でチューニングするのが吉であり、逆に、SP−10MK2については、そのFGの精度とトルクの大きさを生かして制御のスピードを速めることにより15スロットという弱点を穴埋めする方向でチューニングするのが吉ということなのだ。

結果、我がSP−10とSP−10MK2の積分定数はこのようになったのだった。めでたし。めでたし。(^^)


んっ!?

結局これってK先生が最初に設定されたSP−10とSP−10MK2用のオリジナル積分定数設定とすっかり同じではないか・・・・・・(^^;;



「ようやく分かったようだね・・・。」


は、はぁぁぁ〜。m(__)m





SP−10 100kΩ+0.22uF 位相制御なし SP−10MK2 27kΩ+0.1uF 位相制御なし
   位相制御 8時
   
位相制御 8時24分  位相制御 8時10分(採用)
位相制御 9時(採用) 位相制御 9時
位相制御 9時36分 位相制御 10時
位相制御 10時48分 位相制御 11時
位相制御 12時 位相制御 12時




さて、最後にいつものお断りだが、以上は素人の戯言でありその解析内容については当然何の保証もない。ので悪しからず。(^^;




(2006年6月18日)






(ちょっと試聴)



初代SL−1200。
このプレーヤー、既に30歳程度にはなっている筈だが、フォノケーブルをSONYのOFCに交換した以外は、制御基板も含めて全くオリジナルのままだ。我が家にやってくるまで余程大事に使われていたのだろう。外観も機能も30年の時を経てなお初期状態を保っている。ので、我が家でもこのまま大事に使ってやろうと考えている。(^^)
奏でる音も、こう言ってはなんだが、一流だ。(^^;
伸び伸びと開放的で、情報量も十分。わたくし的にはレコードを聴くにはこのプレーヤーで十分だ。こいつは初代SP−10とともにダイレクトドライブレコードプレーヤの先駆けだが、その後のアナログレコードプレーヤーの複雑化、巨大化の歴史は一体何だったのだろうと思えるぐらい。
これまた、一番古いものが一番良い。と言うべきか。
はたまた、人間欲は程々、人生塞翁が馬。と言うべきか。(^^;
こちらはNo−124(改)ドライブSP−10MK2。

これを聴くとやはりこちらの方が良いわなぁ。(爆)(^^;
やはり音の深みがちょっと違ってくる。それは時間軸のスタビリティと情報量の差がもたらすものだろうが、比べればさすがにこちらの方が密度が高い。

結果あらゆる要素で音が良くなる。例えば、より上品だし、凄みも増すし、体温が熱く、情感や実在感が高まって、要すれば奥行きの深い音になる。

が、これを次元が異なるとまで表現すべきか、と言うとそうではなかろうて。(^^;

が、生き生きと熱い演奏になり、情感が深い歌になるのは流石にK式ドライブ。
そしてNo−179(改)ドライブSP−10。と言うかYP−1000U。

アームもカートリッジも同じ、モータードライブシステムも基本的には同じものとなると、駄耳の私にはモーターの違いを聞き分けられない。もしかすると同じような音になるようにチューニングしてしまったのかもしれない。な〜んて。(^^;

敢えて言えば、こちらはより上品でやや大人し目かもしれない。MK2の方はより力強い感じ。同じ2000ccエンジンでもこちらは6気筒、MK2は4気筒といった感じか。

と言って、これも生き生きと熱い演奏であり、歌であることに変わりはなく、しかもスカッとどこまでもスムーズに抜けきっている。(^^)

そしてむこうの躍動感に優れた感じもまた良い。(^^)
DL−301U。今や数少ない庶民の味方のカートリッジだ。(^^)

1984年の発売から22年の現行品。最近の高級カートリッジのように馬鹿高くないのは有り難い。DL−30×シリーズにはこのほかに302も303も304も305もあったように思うのだが、一番安価なこれだけが残った。多分シリーズ中一番手間が掛かっていなかったからだろうて。

出力電圧:0.4mV、針先:特殊楕円針、電気インピーダンス:33Ω、再生周波数:20Hz〜60kHz、質量:6.0g、適合針圧:1.4±0.2g、コンプライアンス:13×10-6cm/dyne と、軽量、ミディアムコンプライアンスの部類。

従って高感度なショートアームの方が似合っているはず。なので、SL−1200に使ってみた。結果、初代SL−1200の付属トーンアームが高感度かどうかは知らないが、これとの相性は良いようだ。ここではより積極的に明解で爽やかな音を奏でる。ノリノリの音楽にはぴったりだ。
では、ロングアームの3012Rでは駄目か。

というと、そうでもない。3012Rは基本的に包容力が高い。

と言うか、301Uの方もミディアムコンプライアンスであり、カンチレバーはテーパーが付いて軽量化されてはいても、極端なハイコンでもなく、シビアにアームを選ぶような立派な部類のカートリッジではないということだ。(^^; で、この組み合せでもなかなかの音だ。

と思ったのだが、やはり駄目かな・・・(^^;

どうもこの組み合わせでは明解と言うより、多少ぼやっと大らかな感じの音になって、ちょっと301Uの特徴が生きないようだ。

 
それでは・・・、と言うわけでアームをショートのAC−3300に交換してみる。

ただし、不精者にはシェル固定式のストレートアームパイプAP−2は使いにくいので、アームパイプはシェル交換の可能なユニバーサルS字型のAP−300にする。

で、針圧1.25g、オイルダンピング量は最小限として聴いてみると・・・・・・

んっ、いいかも。

ダイナミックなのはこのカートリッジの基本的特徴のようで、外観同様103に比べると眩しい感なきにしもあらずだが、低域から高域まで適度に伸びて明解で鮮やかなだけでなく、案外感情、情緒の陰影も上手く醸し出すではないか。と言うわけで、このアームにはこのカートリッジを与えようっと。(^^)
 
DL−103。

1970年の発売だから最早36年ということになるロングセラー。

出力電圧:0.3mV、針先:16.5μm丸針、電気インピーダンス:40Ω、周波数特性:20Hz〜45kHz、質量:8.5g、適合針圧:2.5±0.3g、コンプライアンス:5×10-6cm/dyne。 と、重量級ではないがローコンプライアンス。

ちょっと高域が抜けきらない感がないことはないが、基本的には黙々と言われたことをこなしていく。少しは自分の工夫や好みというものを主張したらよさそうなものだが、根暗に出来ているらしくそういうことが出来ない。安定度が高くSL−1200に着けても、3012−Rに着けてもそれぞれそれなりに鳴るのは生来の真面目さが故。今、3012Rとの組み合わせでは、己の存在を消し、ただレコードに刻まれた音そのものを出す。情報はもっとも正確だと感じさせる音で、ソースが良ければ闇や黒をも上手く出す深い音になる。要するに、これで良い音を出すためには良い音を拾わせなければならない。ある意味贅沢なやつ。
DL−103R。

1994年の発売だからまだ12年ということではある。

出力:0.25mV、針先:16.5μm丸針、電気インピーダンス:14Ω、周波数特性:20Hz〜45kHz、質量:8.5g、適合針圧:2.5±0.3g、コンプライアンス:5×10-6cm/dyne。

要するにこれは103の発電コイルを99.9999%の6N高純度銅線に代えただけのものだと思うのだが違うかな。かつて103の発電コイル材変更モデルは沢山あったのだが今となってはこのRしかない。要はそれだけの違いだと思うのだが、これで103も微妙にバランスが変わり、高域の抜けがスムーズでより華麗な鳴り方になる。のだが、103オリジナルで感じられるそのまんまの体臭や情念のような根暗なリアリティは薄れる。ような気もするのだが気のせいか。(^^;
この辺、不満に思う方は不満に思うだろうて。が、わたし的には駄耳なので、より現代的103としてこれはこれで楽しめる。(爆)
 
空いてしまったSL−1200にはこれをあてがってみた。

AT−F3U。シェルはAT−LT13a。実売2つ合わせて1万円を切る。(^^;
 

出力:0.35mV、針先:0.2×0.7mil 楕円、電気インピーダンス:12Ω、周波数特性:15Hz〜50kHz、質量:5g、適合針圧:1.5±0.25g、スタティックコンプライアンス:35×10-6cm/dyne、ダイナミックコンプライアンス:9×10-6cm/dyne。これも発電コイルは6N銅だ。

オーディオテクニカのMCカートリッジでは最廉価だが、聴いてみると驚く。その奏でる音の落ち着きはまるで103の如し。チャラチャラしたところのない大人の音なのだ。素直で自然。これはただものではありませんねぇ。
初代SL−1200との組み合わせでは付属アームがその能力に追いつかない。
・日本フォノグラム EW−10001

・THE THREE

・JOE SAMPLE(piano)、RAY BROWN(bass)、SHELLY MANNE(drums)

・1975年11月28日、ロサンジェルスのワーナー・ブラザーズ・スタジオにて録音。ノイマンSX−74カッターヘッドによるダイレクトカッティング。ピアノにノイマンU−87が2本、ドラムスにはシュアSM−56が3本、ソニー38Aとセンハウザー421が各1本、ノイマンU−87が2本、そしてベースにはシュアSM−57とソニー38Aが各1本使用されたマルチマイク録音。

・冒頭ピアノのペダル操作音の生々しさにハッとする。に始まって全編に渡り音の鮮度が素晴らしい。ヒスもなくノイズリダクションないこと等による音の素直さは、やはりこの方式でなければ得られないものだ。

・演奏内容は、勿論敢えて言う必要もない名手3人だ。適度な緊張感はかえって良い方向に働くか、あるいはそんなことは演奏する上に置いては微塵も関係ない人たちなのだろう。ダイナミックで、神経が行き届いていて、実にご機嫌。(^^)
・日本フォノグラム EW−10002

・THE PENTAGON

・Clifford Jordan(Tenor Sax)、Cedar Walton(Piano)、Sam Jones)(Bass)、Billy Higgins(Drums)、Ray Mantilla(Congas)

・1976年5月17日、ニューヨークのメディア・サウンド・スタジオにて録音。

・これもマイク十数本によるマルチマイク録音であるが、ダイレクトカッティングだ。が、ダイレクトカッティングとは思えないほど音が整っている。と言っては語弊があるか。

・要するにダイレクトカッティングによる音の鮮度は勿論のこと、各楽器の音のバランス、全体の音の厚みなども実にご機嫌なのだ。この辺はマイクセッティングやミキシングが余程上手く、要するに録音エンジニアの能力が高いということか。これ本当にダイレクトカッティングなのか?と思うほど。
・日本フォノグラム EW−10003

・なき王女のためのパヴァーヌ

・LA−4(バド・ジャンク:アルトサックス、フルート、ローリング・アルメイダ:ギター、レイ・ブラウン:ベース、シェリー・マン:ドラムス)

・1976年10月15日、16日、ロス・エンジェルスのワーナー・ブラザース・レコーディング・スタジオにて録音。これもドラムにマイク6本、ベースに2本、アルトサックスに1本、フルートに1本、ギターに2本の計12本のマイクが使われたマルチマイク録音。

・ダイレクトカッティングは名手たちの演奏に限る。なき王女のためのパヴァーヌ、枯れ葉など、緊張感と憂いに満ちて実に素晴らしい。

・が、前2作に比べると鮮度がちと落ちるような気もする。のは使用機器にエコーマシンやリミッターが明示されているが故の気のせいか。(^^;

・TBM PAP−20026

・MARI

・中本マリ

・中本マリ(vo)、横内章次(g)、稲葉国光(b)、石松元(ds)、西条孝之介(ts)、伏見哲夫(tp)、松石和宏(vib)

・1977年4月9.13日、東京エピキュラススタジオでの録音。

・TBMであるから録音エンジニアはお約束の神成芳彦氏。よって例の如くオンマイクの明解な音だが、中本マリのボーカルは一枚ベールを被せたような柔らかい音作りになっているよう。だが、それで良い。人の声など耳元で聴くものではない。し、気だるく甘い雰囲気が良く出ていてフェロモンばっちり。(^
^;
・PABLO 28MJ3202

・Crazy and Mixed Up

・SARAH BAUGHAN(Vo)、Roland Hanna(Piano)、Andy Simpkins(Bass)、Harold Jones(Drums)、Joe Pass(Guitar)

・1982年3月1,2日ハリウッドのGroupWスタジオでの録音

・特にコメントなし。(爆)

・ただ、その演奏と歌に酔いしれる。(^^;
・MAGNUM RECARD APR032

・DREAMING

・AMAMDA McBROOM

・録音年月日も含め記載がないのでいつ頃どこで録音されたものなのか良く分からない。が、JVCのK2−XRCDテクロノジーを使用し小鉄徹氏がカッティングエンジニアとある。最近LPで再発されたもので、おそらくオリジナルは20年位は前のものだろうか。

・ぐっと芯の詰まった密度の高いハイファイサウンドは実に現代的。音のクオリティが良いのでなかなかに気持ちがよい。アマンダの歌詞を慈しむように紡いでいく歌声も溌剌としていて爽快。だが、声はそれほど若くない感じなので、そんなに若いときの作品ではないのかも。



・米シェフィールド LAB13

・Growing up in Hollywood Town
グロウイング・アップ・イン・ハリウッド
・vo:アマンダ・マクブルーム.L・マヨーガ指揮オーケストラ

・1980年3月25日から27日、MGM−シェフィールド・ラボ・スタジオでの録音。

・いくら上がハイファイサウンドといっても、これを聴くと全く勝負にならない。(^^; シェフィールド・ラボのダイレクトカッティング。レコードの冒頭、音が出た瞬間に鮮度の違いが明確だ。マクブルームの声も若々しく力強く伸びやかで高音は透明で天まで届きそうだ。歌も実に上手い。全編素晴らしい生々しさ。

・ポピュラー音楽でこれだけ音が良いのはなかなかないだろう。が、ダイナミックレンジが広いので良いレコードプレーヤーが必要だろう。 
・米シェフィールド LAB15

・ウェスト・オブ・オズ

・アマンダ・マクブルーム、リンカーン・マヨーガ

・1981年4月24日〜28日ダイレクト・カッティング。LAB−13とほぼ同じメンバーでの録音。入り口から出口まで自作管球式らしい。

・ふ〜む。これもダイナミックレンジが広く上と
同様の素晴らしさなのだが、生々しさという点ではLAB13の方が上か。何故ならこちらは2枚上の“DREAMING”のようなハイファイサウンド的な感じを受ける場合があるし、アマンダの声も“DREAMING”における声に近いような気がするから。要するにちょっと人工的なのだ。何故だろう。エコーマシンでも加えられたのだろうか。不明。(^^; とは言え、これも並ではない。超優秀録音盤。

・ユニバーサル ビクター MVJJ−1

・You Are So Beautiful

・木住野佳子(p)、古野光昭(b)、安カ川大樹(b)、市原康(ds)、岩瀬立飛(ds)

・1998年12月16,17、18日東京JVC青山スタジオでの、スチューダーA−80改造バージョンによるアナログ1インチ2トラックマスターレコーダーによる録音。マスタリングエンジニアは小鉄徹氏。

・う〜ん。美形には弱い。(爆) この写真、LPの大きなジャケットで見るとなお良いですなぁ。(^^; ← (--)アホ

・こういう人がばりばりぶりぶりと力強くピアノを弾くのだから驚いてしまう。勿論ばりばりぶりぶりである一方繊細でとっても情感豊か。出来上がりのサウンドは勿論ハイファイ系だが、清涼感溢れる素晴らしい演奏だ。で、CDよりLPの方が鮮度が高くて帯域もダイナミックレンジも広くてずっと良い。のはCDプレーヤーがしょぼいせいか。(^^;




(2006年8月10日)





(その後の3:不埒な行為が天罰を招く!?)


ああ、至福の時だ。(^^)

金田式ターンテーブル制御アンプでドライブしたSP−10。「ターンテーブルの存在を全く感じさせない音」とK先生おっしゃるとおりだ。どっしりと安定し、ぎっしりと充実し、はっきりと情感を奏で、すっきりと消滅する音達。まさに、明解で躍動感にあふれ、スリルに満ちた音楽を奏でる。

が、またしても至福の時は長くは続かなかった・・・(泣)

ある日、出てくる音に何となく不安を覚えたのである。
それは一瞬に終わり後はいつも通りなのでそのまま聴いていたのだが・・・

それが最近になって頻繁になり・・・遂にこりゃいかん、完全にワウフラだ。

ひぇー、なんで???(涙)

と、どこかで読んだような展開だが・・・(^^;



実は、これも解決までにはあれこれ悩んだ。

音程が上がるのだから、第一に位相制御部が犯人としては臭いのではないか、と睨んで、オシロでサンプリングパルスを観察するとやはりパルスが流れる。もしやフェーズアウトパルス方式はまずかったのだろうか。パルス発生が不安定なのかも・・・やはりこんな下手な方式を考えて悦に入っていたなどという不埒な行為が天罰を招いたのかもしれない。(^^;

そして、これが誤動作とするならば、誤動作の原因は電源のノイズではないだろうか?そう言えばこういう症状が発生するようになったのはAC電源で動かすようになってからだ。が、オシロで見てみても電源の±5Vにノイズが乗っているような気配はないし、念のために4046や4528といった怪しそうなICの電源ラインにデジタル基板よろしくCを噛ましてみたりもしてみたのだが、変化はない。

試しに、位相制御をその調整ボリュームで効かなくしてみたら、な〜んとそれでもワウフラが出る。ありゃりゃ・・・(^^;

となるとこれは位相制御部の仕業ではない。

では、速度制御部か、と、FGパルスとその作り出す三角波をオシロで見てみたら・・・、
ふ〜む。三角波が時々乱れる。そしてその乱れた時に音程が狂うのだ。したがって、これが原因に違いない。

が、何故そうなるのかが問題だ。ICの誤動作か。誤動作であるとすれば誤動作を引き起こす原因を探る必要がある。あるいはAC電源動作のせいで微分回路による555のトリガー動作が上手く行っていないのかもしれない。

と、あれやこれや制御部が犯人だろうとの思いこみから原因調査に時間を費やしてしまったのだが・・・

結論を言うと原因は制御部ではなかった。

真相は書くのが恥ずかしいのだが、まっ、またこんなことが起こった時のために、忘れないように書いておこう。(^^;

犯人はこれだったのだ。

これはフォトインタラプタSG2BCが作り出すFG信号。

ワウフラの原因は、フォトインタラプタSG2BCの取り付け部分が微妙に最良点を外れてしまったために、この信号のマイナス側の伸びが悪くなり、その伸びの振幅も上下に振動するようになって、ついに0V以下に達っしなくなることによるものだったのだ。

その0Vに達しなくなった時に、制御部は当然速度が遅れたと判断して急速な加速信号を出し、酷いワウフラを引き起こしたということだったのである。この0Vに達しなくなった時のワウフラは誰でも分かるものだが、ワウフラは、FG信号のマイナス側への伸びが悪くなって、その伸びの振幅が上下振動しているような状況にあっても当然発生する。振幅の上下振動によってそれが0Vと交差する周期が揺らぐからだ。

要するに、モーターが一定速度で回っているにもかかわらず、フォトインタラプタの取り付けがまずいことを原因としてFG信号の周期が変わると、制御部はモーター回転の周期が変動したと見なして加速信号や減速信号を出してしまう。故にワウフラが発生してしまうのだ。これは制御部が正常動作をしているのに、結果としてワウフラ注入機として働いてしまうという状態である。

結局、制御部は速度制御部も位相制御部も、このFG信号が正しく発生していなければ正しく働きようがないのである。その意味で、「フォトインタラプタの取り付け部分は、制御アンプの成否の鍵を握っている。」などと上で書いているのにもかかわらず、今回はこれが原因だと気付くまでにややしばらくの時間を要してしまったのだった。お恥ずかしい。(^^;

で、フォトインタラプタの取り付けを再度調整して得られたFG信号がこの写真。適切に取り付ければこのように上下は飽和して方形波状になり、振幅が揺らいだりはしない。

が、時間軸では多少揺らいでいる。のが上手く写った。これがストロボパターンの精度限界により生じるジッタ(時間軸方向の揺らぎ)である。

この時間軸のジッタは積分回路で取り除ける。

とにもかくにも、FG信号がこのように元に戻って我がSP−10は完全に調子を取り戻したのだった。そのスタビリティは比類がない。めでたし、めでたし。(^^)

よって最後に一言。

SP−10のワウフラについては、フォトインタラプタによるFG信号(フォトインタラプタの取り付けが拙くてFG信号が不適切なものになってしまっていないか)を疑うべし。(^^;



(2006年9月16日)






(その後の4)




・No−203(2009年9月号)において久しぶりにSP−10用のターンテーブル制御アンプの新作が発表された。ダイレクトドライブ・ターンテーブルの名品SP−10Mk1を最新のDCアンプで制御してマーラーの宇宙を再現しようという主旨であるから、当然これがK式ターンテーブルとしては最高峰のものになり、次号ではその音が大絶賛されることになるものと思われる。

・したがって、私としても追試してみたいところなのだが、今回はちょっと大規模化しすぎて気楽に手を出せるという感じではないなぁ。これだけ変更が大きいと既存のターンテーブル制御アンプの一部に部分的に取り入れるというのも難しいので、結局新たに新ターンテーブル制御アンプを製作することになるだろう。で、果たしてそのモチベーションが生まれるか?

・なのだが、我がSP−10用制御アンプもSP−10Mk2用制御アンプもすでにNo−179用のAC整流電源で動作させて久しく、それで何の問題も生じていないこともあり、次号で、DCアンプ流D/AコンバーターによるCD再生では得られない(あるいはそれを遙かに凌駕する)マーラーの宇宙が再現された、というような評価であればそのモチベーションが生まれるかもしれない。




Control Unit for SP−10
Control Unit for SP−10 MarkU 




(2009年8月18日)